遺言書と遺留分
遺留分とは
遺留分とは、一定の相続人に、一定の割合で法律上確保されている相続分のことです。
例えば、「全財産をある人に相続させる」という遺言があった場合でも、兄弟姉妹以外の相続人は、法律で決められている一定の割合(=遺留分)で、被相続人の財産を相続する権利を確保されていることになります。
遺留分の割合 |
直系尊属のみが相続人であるとき |
相続財産全体の1/3 |
その他の場合 |
相続財産全体の1/2 |
兄弟姉妹には遺留分はありません。
したがって、例えば妻と兄弟が法定相続人の場合、遺言で「妻に全てを相続させる」としておけば、兄弟は自分の権利を主張できません。
また、相続放棄をした人にも、遺留分はありません。
各相続人の遺留分は、法定相続分で乗じて計算しますので、例えば配偶者と子供2人が相続人の場合、以下のような計算になります。
|
法定相続分 |
遺留分 |
妻 |
2/4 |
2/4×1/2=1/4 |
子供A |
1/4 |
1/4×1/2=1/8 |
子供B |
1/4 |
1/4×1/2=1/8 |
遺言書の作成と遺留分への配慮
兄弟姉妹以外の相続人(=遺留分の権利を持つ人)がおられる場合でも、遺留分を無視して遺言書を作成することは可能です。例えば、長男さん、長女さんがおられる場合に、「全ての財産を長女に相続させる」といった遺言書を作る場合です。
しかし、後々の家族関係を考え、遺留分に配慮して作成されることをお勧めします。例えば、下記の方法が考えられます。
◎遺留分に相当する財産を計算し、遺留分の問題が生じないように遺言書を作成する
◎付言事項に「どうしてこのような遺言書を作成するのか」という気持ちを書き記しておく
◎遺留分の請求があった時に対応できるよう、金銭や生命保険を残す等、解決の手段を用意しておく
遺留分を侵害しない内容であっても、相続人によって、相続する財産の額に差が生じる場合は、気持ちの面での手当てをしておきましょう。
遺留分の放棄
遺留分を持っている相続人は、被相続人が亡くなられる前に、遺留分を放棄することができます(これに対して、「相続放棄」は、死亡する前にはできません)。遺留分を放棄することについては、家庭裁判所の許可が必要です。
遺留分の放棄は、全国的にも少ない手続きですが、遺留分放棄のきっかけとしては、下記のような場合が考えられます。
◎相続人間で将来揉めないよう、「全ての財産を長男に相続させる」旨の遺言書を作成すると同時に、長女さんに遺留分を放棄してもらう。
長女さんには、遺留分放棄と同時に生前に贈与するか、過去に贈与が行なわれているのであれば、その旨の確認をしてもらう
この方法を用いることで、生前に、将来の相続問題を解決させておくことが可能です。
遺留分放棄の許可の申立 |
〔申立人〕 |
遺留分を有する相続人 |
〔申立の時期〕 |
相続開始前(被相続人の生前) |
〔申立先〕 |
被相続人の住所地の家庭裁判所 |
〔申立書〕 |
家庭裁判所で備え付けの書式に必要事項を記入し、添付書類を添えて、家庭裁判所へ提出します。 |
〔必要書類〕 |
・遺留分放棄の申立書
・遺留分を放棄しようとする人の戸籍謄本
・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の財産目録
※事案によっては、この他の資料が必要になることがあります。 |
〔申立費用〕 |
・収入印紙 800円
・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所により異なります) |
〔申立後の流れ〕 |
申立書と必要書類の提出後、裁判所で書類が審査されます。
その後、裁判所から指示があり、裁判所によって申立人等関係人の面談がされるか、もしくは、申立人等関係人が裁判所から照会書に記入返送をすることになります。
個々の事案によりますが、裁判所の許可が出るまでには、1か月程度はかかります。
※遺留分を失うというのは、遺留分の権利を持つ相続人にとっては大きな問題ですので、自らの意思によってされていることかどうかについて、裁判所の確認が行なわれます。 |
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遺留分を侵害する遺言書も有効に成立します。
しかし、せっかく作成した遺言書によって、後々相続人の方の間で遺留分のトラブルになるのは、避けたいことです。
・遺留分の問題が生じない内容にしておく
・すでに生前に贈与をされていて、遺留分の問題は生じない場合は、そのことが分かるようにしておく
・あえて遺留分を侵害する遺言書を作成する場合は、その趣旨を伝えてあげる
という配慮も必要なことと思います。
遺言書の付言事項で、法的なこと以外のメッセージを残しておいていただくことも、お勧めしています。
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