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生命保険を利用した相続・相続税対策

◎生命保険の基礎知識

生命保険金(死亡保険金)は、被保険者に相続が発生した場合に、予め定められた保険金受取人に支払われるものです。相続に関する生命保険金の使い道としては、例えば下記の方法が考えられます。

1.生命保険金を、残された家族の生活費に充てられるようにする。
2.相続での代償分割の資金として用意しておく。
  →例えば、主な財産が不動産だけである場合、不動産を子供Aに残す前提で、子供Aから子供Bに代償金を渡せるよう、生命保険の受取人にAを指定しておく。
3.相続税の納税資金を用意しておく。
4.生命保険の非課税枠を生かして、相続税の負担を軽減させた形で財産を承継させる。

(1)生命保険と相続放棄の関係

保険金受取人に指定されている相続人が相続放棄をした場合でも、生命保険金を受け取ることができます。保険金受取人が「法定相続人」(死亡時の相続人を意味します)となっている場合でも、同様と考えられています。

いずれも、相続によって取得したものではなく、保険契約に基づく「固有の権利」を取得したと考えるためです。

(2)生命保険を受け取った場合の税金

被保険者と保険料負担者、保険金受取人の関係によって、下記のとおり課税される税金が違ってきます。

被保険者 保険料負担者 受取人 課税関係
妻に相続税
子に贈与税
妻に所得税

相続税で関係してくるのは、契約者と保険料負担者が同一の場合です。

(3)生命保険の受取人の死亡

生命保険の受取人が先に亡くなった場合、受取人として定められていた人の法定相続人が受け取ることになります。

自分が望まない人が受け取ることになる可能性がありますので、改めて受取人の変更手続きをしておくのが望ましいでしょう。

(4)生命保険に関する権利

被相続人が保険料を負担していた保険で、被保険者が例えば妻等、被相続人以外の人である場合、被相続人が死亡しても保険金は支払われません。

この場合、被相続人が生前に負担していた保険料に対応する金額が、「生命保険に関する権利」として、相続税の課税対象となります。

◎生命保険を使った相続税対策

相続税の基礎控除の引き下げに伴い、身近に使える相続税対策として、生命保険を使った対策をご紹介します。

1.死亡保険金の非課税制度を使う

「契約者(保険料負担者)が父、被保険者が父、受取人が相続人」の契約形態の場合、相続人が受け取る生命保険金は、相続税の課税対象となります。 

しかし、生命保険金で受け取る場合は、「法定相続人×500万円」の金額まで非課税の扱いとなります。 

★生命保険金の非課税枠

相続人 基礎控除額
相続人1人の場合
500万円
相続人2人の場合
1000万円
相続人3人の場合
1500万円
相続人4人の場合
2000万円

※計算上の法定相続人数には、相続を放棄した者も含まれますが、相続を放棄した人が取得した保険金には、非課税とされる部分はありません

相続開始時に、預貯金で1,000万円あればそのまま相続税の課税対象としてカウントされるのに対し、生命保険金で受け取ることによって1000万円分(相続人2名の場合)を非課税にできる計算になります。

具体的には、「父を契約者、父を被保険者、相続人を受取人」として一時払い終身保険を契約する方法が考えられます。

  • 一時払い終身保険の契約をする場合は、万が一、将来的に資金の必要が生じた場合、保険を解約することによって、契約者の父にお金を戻すことも可能となります。「相続税対策だからといって、現金を減らしていくのは不安」と思われる方も多いでしょうから、現金を減らす不安への手当てもできます。
B.生前贈与と生命保険を組み合わせる

贈与についての年間の基礎控除額は110万円です。
この基礎控除枠を利用して、例えば、父から子や孫に毎年金銭を贈与し、その金銭を利用して、子や孫が生命保険に加入する方法です。

父から見ますと、金銭で贈与した分の財産を減らしていけることになります。
それと並行して、子や孫が契約者となって、父を被保険者として生命保険に加入することにより、相続税の納税資金を準備することも可能となります。

具体的には、年払いの終身保険を契約する方法が考えられます。
この場合、子や孫が受け取った生命保険金は、相続税ではなく、一時所得として所得税、住民税の課税対象となります。

また、子や孫名義で終身保険や養老保険、個人年金を契約することで、贈与された金銭を生かして、子や孫の資産形成に使うことも可能です。保険と組み合わせて契約することで、子や孫が、贈与を受けたお金を無駄遣いすることも防ぐことができます。

  • 相続や遺贈によって財産を取得した人に対する相続開始前3年以内の贈与については、相続税を計算する時に、財産の額に加算して計算されることになります。

◎生命保険を活用した相続対策

「財産のほとんどが不動産」である場合、まずは、遺言書で「不動産についてはAに相続させる」と決めた上で、他の相続人BCについては、預貯金で残せるように配慮をする方法が考えられます。

また、相続人ABCのうち、BCに預貯金で残せない場合は、AからBCに不動産を相続するための「代償金」として支払えるよう、相続人Aを受取人として、生前に生命保険に加入しておく方法が考えられます。

生命保険会社  
    ↓(生命保険金)  
相続人A →  相続人B・C
  (不動産を相続する代償金として支払う)

生命保険金は「相続財産」ではなく、「受取人固有の財産」であると考えられていますので、遺産分割協議をしなくても、受取人が受け取ることができます。

生命保険金と特別受益

上記のとおり、生命保険金は、受取人固有の財産であり、「相続財産ではない」のが基本的な考え方です。

しかし、平成16年10月29日の最高裁判例では、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」は、生命保険金を特別受益として相続分を計算すべき、という判断がされました。

後日のトラブルを防ぐため、この判例の趣旨も踏まえた上で契約されることをお勧めします。

★ 司法書士行政書士吉田法務事務所からのご案内 ★ 

当事務所では、生命保険会社の代理店をしていますので、遺言書作成と並行して、生命保険を使った相続対策をご提案することができます。

特に、生命保険の非課税枠(1名あたり500万円)を利用する目的での生命保険の活用は、ニーズの高い部分です。

相続税の試算が必要な場合には、税理士さんをご紹介の上、相続税対策にも対応しておりますが、あくまでも、司法書士・行政書士業務に付随する形でお受けすることなりますので、「相続税のご相談のみ」の場合は、お受けしておりません。

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