生前贈与とは
不動産の生前贈与
「贈与」は、贈与する人が亡くなってから発生する「相続」と違い、贈与者が生前に行われるもの、という意味で、「生前贈与」ともいわれます。
贈与は、「無償で」財産を譲る契約であるため、一般的には「親から子に」「親から孫に」。
もしくは、「夫から妻に」「妻から夫に」行われる場合が圧倒的に多いです。
★「相続」と「生前贈与」の違い
例:「父」から「子」への所有権移転(名義変更)
例:「夫」から「妻」への所有権移転(名義変更)
◎「父」や「夫」が亡くなった時に発生するのが「相続」
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◎「相続」を待たずに、「父」や「夫」が元気なうちに行われる手続きが「贈与」
遺産分割協議を待たずに、当事者の合意があれば名義変更ができる、というメリットがあります。 |
不動産の生前贈与では、年間110万円の基礎控除の範囲内では評価が納まらないことが多いため、「相続時精算課税制度」や「配偶者控除」等、まずは税制面で使える制度がないかどうかの検討が必要です。
もしくは、毎年ごとに贈与契約を積み重ねられ、何回かに分けて不動産の名義を変えられている例もあります。
不動産の生前贈与をする場合には、贈与税が非課税になる場合でも、名義変更の際の登録免許税、不動産取得税等、登記にかかるコストが高額になる傾向があります。諸費用も含めた検討が必要となります。
★例えば、「父から子」に不動産を「贈与」する場合、「相続」させる場合のコストの比較
1.贈与の場合 |
− |
メリット
・今すぐに名義を変えられる、というのが最大のメリットです。
デメリット
・非課税枠や特別控除を使えない場合は、贈与税が高額になることがあります。
・登録免許税の税率は、相続の場合が0.4%に対し、贈与の場合は2%と、高額になります。
・不動産取得税は、相続の場合が非課税に対し、贈与の場合は課税の対象になります。その不動産に住まれていない方に贈与する場合は、特に注意が必要です。 |
2.相続の場合 |
− |
メリット
・登録免許税は、贈与の場合と比べて、1/5で済みます。税率は、贈与の場合2%に対して、相続の場合0.4%です。
・不動産取得税が課税されません。その家に住んでいない人が相続した場合も、同様です。
デメリット
・遺言書を書いたとしても、不動産の名義変更は、所有者が亡くなった後でないとできません。その間の権利関係が不安定なものになります。 |
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「贈与で不動産の名義変更をしたいんです」とご相談に対し、約1/3程度の例で、コストを見られて断念されます。
登記費用の他、生前贈与に必要な諸費用を負担してでも、生前に贈与するメリットがあるのか。
もしくは、遺言書に記載することで、亡くなった時に効力が生じる「相続」や「遺贈」ではダメなのか、といった点からもご検討下さい。
農地法の許可
不動産の生前贈与の中で、農地の所有権を贈与する場合は、事前に農業委員会又は知事の許可を受ける(市街化区域であれば届出)ことが必要です。
所有権移転の許可については、農地法第3条に規定されていますので、「農地法第3条の許可」といわれています。
また、農地を農地以外のものにする場合(農地の転用)にも、許可や届出が必要になります。転用の場合、農地法第4条と第5条の2種類があり、所有権の移転が伴うかどうかで区別されています。
なお、許可に必要な書類は、各農業委員会や都道府県によって異なります。
窓口になる役所に、事前の確認が必要です。
種 類 |
農地法第3条 |
農地法第4条 |
農地法第5条 |
必要な場合 |
農地のまま、所有権を移転する場合 |
所有者が自ら農地を転用する場合 |
権利(所有権、賃借権等)の移転や設定を伴う転用の場合 |
必要書類(例) |
・許可申請書
・土地登記簿謄本
・譲渡人の印鑑証明書
・譲受人の住民票
・農業経営計画書
・付近の見取図
・地積測量図・公図
・地元農業委員の確認書 |
・許可申請書
・土地登記簿謄本
・譲渡人の印鑑証明書(5条のみ)
・住民票
・利用計画書
・付近見取図
・地積測量図・公図
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期間 |
許可申請から約1〜2か月程度かかります。 |
- 農地法3条の許可申請で、新規参入の場合、事前に審査が必要になることがあります。
- 農地法4・5条の許可申請で、大規模な露天駐車場、露天資材置場等の場合は、事前に審査が必要な場合があります。
★参考 農地法3条の許可の要否
農地の所有権移転をする場合、農地法の許可申請の要否については、登記をする原因によって異なってきます。
「相続」と「包括遺贈」による場合は不要ですが、「贈与」「特定遺贈」の場合は必要です。
登記の原因 |
要否 |
贈与 |
必要
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死因贈与 |
必要
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相続 |
不要
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包括遺贈 |
不要
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特定遺贈 |
相続人以外の場合は必要
|
★ 司法書士行政書士吉田法務事務所からのご案内 ★
司法書士として贈与に関与させていただく機会で多いのは、不動産がある場合の贈与登記になります。
贈与による所有権移転に要するコストは、登録免許税だけで2%です。
固定資産税評価が1000万円の不動産であけば、20万円と高額になります。
その他、不動産取得税や贈与税課税の有無の検討も必要です。
生前贈与に必要となる諸費用も踏まえて、贈与されるかどうか、ご検討いただくようにしています。
なお、贈与は、親子間や夫婦間の場合がほとんどになりますが、事情によっては、親族間に限られずに利用されています。例えば、地主さんと賃借人間の建物の贈与、隣地所有者間の土地の贈与、などの例があります。
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